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ITの基本戦略を設定する:⑧自社の独自性を考え、疑い、諮る。そして、未来の経営者とITの基本戦略を握る
自社の独自性を考え、疑い、諮る。そして、未来の経営者とITの基本戦略を握る
難しいのは、強みを伸ばすという発想もあれば、弱みを克服するという発想もあるため、IT部門としてアプローチするか一筋縄ではいかないことだ。推奨したいのは、「独自性」で自社の業務・システムをみてもらうこと。長い間、こだわりをもってやってきた業務もある。経営は、顧客があるものであり、相手があるものである。昨日までの強みも、ある日突然弱みに変わることもある。また、経営の重点施策が弱さの強化になるときだってあり、どれだけ自社独自の能力を強化しなければならないか、考えなければならない時だってある。独自でなければならないものが、強みなのかそうではないのか。この点を考えておくことを推奨したい。
1.強みではない。しかし、独自でなければならない
こういうものは、最早存在してはならない。存在している余裕はない。読者の皆さんも、十分におわかりだろう。もっとも、強みではないのに、独自でなければならないことを要求するユーザーがいることもいることはわかる。昔は、そういう面倒臭いユーザーも沢山いた。しかし、今は、ほぼこの領域は消えつつあるし、面倒臭いユーザーも徐々にいなくなっていくだろう。世の中に数多くのサービスもある。迷わず、そうしたサービスを使うべきだし、そういう方向にシフトすべきだろう。もし、そういう部署が残っているようならば、中長期的に2にもっていくべきである。
2.強みではない。もはや、独自である必要がない
企業の中で多いのは、ここだ。強みだと思っているのだが、実はたいしたことをしていないこともあるだろう。逆に、独自性が邪魔になって、古臭い業務となっており、もはや強みとは言えないものもあるだろう。上述しているが、世の中に数多くのサービスが出ている。多くのものがコモディティとなって安価で利用できるようになるのは、資本主義の宿命だ。迷わず、そうしたサービスを使うべきだろう。そうしたサービスは、益々進化する。自前で考えるよりも、産業全体で進化を考えてもらうほうが企業全体のためにとってはいい。
3.強み。ただし、独自性は実はない
難しいのはここだ。強みにすべきなのだが、中々そうはいかない領域である。外を使って、ベストプラクティスをもってくればいいのではないかと、経営者が考えるところだ。そして、そうそう上手くいかないところだ。上手くいかせる方法は今後に譲るとして、独自性を持つことは捨て、まずは外部のパッケージやサービスを利用するところから入っていくべきところだ。そのうえで、独自性を追求する必要が出てくれば、将来的に4にもっていくことを考えたい。
4.強み。独自性が非常にある
ここにこそ、リソースと人材を振り向けるべきだ。それは、世の中のリサーチに始まり、構想や開発のリソースも含めて、見ていきたいところである。他社がやっていない業務をやっている、他社と同じ業務なのだが、やり方が全く異なっている、こういうケースだ。ただ、筆者の経験上、そこまで独自性をもって運営をしなければならない業務を持っている企業は、そうそうない。ほとんどの企業は、3をきっちりやる中で、4に入っていく。。。そういうステージの企業が多いと思う。邪魔なのは、さほどでもないのに、自分達に独自性があると誤解をしている場合だ。議論がとてもややこしくなる。冷静で、客観な判断を行いたいところだ。
自分達が持っている営業、マーケティング、生産管理、物流、調達、事務・業務、経理、人事、業績管理、生産技術、開発などの業務をプロットしてみよう。2と3が多いようならば、とても健全だ。3の領域に磨きをかけ、だんだんと4にもっていくことを日々の業務や年度のIT部門の組織体制編成や配属を志向していくといいだろう。
しかし、落ちこぼれている状態においては、「見かけ上」1と4に、相当数のプロットがあることが多い。さほどではないのであるが、競争優位もないのに独自性を大切にしていたり、確かに強みではあるものの、本来は独自性はいらないのにやたらと独自性を強く望んでいる領域が結構ある。いや、十中八九、そういうものがある。IT部門が落ちこぼれてしまう企業は、合理的・客観的に物事が判断されず、情実的・主観的な判断が結構存在しており、会社の中で「無茶」なことがまかり通っているものだ。
結局のところ、落ちこぼれのIT部門が基本戦略として考えるべき方向性は、2と3のところに色々なものをきっちりと入れていくことだ。上手く捨てるべき、優先順位を下げるべきものが多く存在している。企業にとっての独自性を、うまく捨てていくことである。そうした思い切った判断を「ひっそり」としておきたい。
この段階では、自分自身の考えを整理しておくことで十分だ。実際に実行をするのは、非常に難しい。後述するが、こうした思い切った判断をぶち上げるよりも、さっさとやってもらいたいと思われていることが結構ある。それは、後述する。ただ、こうした判断は必要だ。なぜなら、実行があまりにも難しいので、不退転の決意をもって挑まなければ、実行がいつまでたっても着手されないからだ。実行には、相当な困難をもたらすことは避けられない。もしかしたら、出来ないかもしれない。いや、落ちこぼれゆえ、失敗の可能性しか思いつかない状態だろう。しかし、まずは自分達が目指すものを決めておかねばならない。そうしないと、前に進めない。
「ひっそり」と雖も、可能であれば、経営企画部長とこっそりと握っておくことを推奨する。ポイントは、経営企画部長かどうかではない。将来の経営者という意味だ。数年後、自分が経営者になったときに、いかに楽に経営できるようにしておくか、そういう視点で見てもらえるような人と、握っておくといい、そういう意味だ。
これ、実は、日本のエクセレントカンパニーで、実際に筆者が経験したことをベースにしている。筆者が相対していたのは、課長クラスなのだが、IT化に非常に真剣だった。当初はなぜそんなに真剣なのか、訝しがっていたのだが、その人は、自分が役員になったときにどうするか?という視点で今の業務の不満点を見ていた。こういう情報が欲しい、この無駄は省きたい、グローバル企業はこういうことが出来るはずだが、自分達の会社ではそれは無理なので、これはやりたい、逆に、これだけは会社の存立基盤を為す話なので必ずやらなければならない、ということを経営視点で判断できていた。当たり前だ。自分が経営者になると思っているのだから。因みに、その人は、実際に役員に昇進されたことを付記しておこう。
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