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ITの基本戦略を設定する:⑨世の中のものを上手く使えるようになることでミッションを実現する

世の中のものを上手く使えるようになることでミッションを実現する

何をミッションにするか、それが日本の企業では難しい。。。ということを上述している。
これまでに、日本企業がいかにITを利活用することが難しいか見てきた。また、海外企業のように、技術=革新と考えることは危険であるということも言及してきた。経営は、独自の商品や自分達独自の人材で、独自の企業を永らえようと爪の火をともすようにコストや人件費を削りながら企業生命を永らえようすることも言及してきた。基幹系という、ITが最も活躍できそうなところさえ、日本企業は難しいとも述べてきた。そうした中、IT部門は落ちこぼれ、結果的に「独自性」なんて考えているような状態ではないということ述べてきた。

そう、日本のIT部門は、既に世の中にあるものを使い、コア・ケイパビリティを、そこそこに強化するのだ。

ここからは、しばらく、理屈ではないものの言い方を多用することを容赦頂きたい。

これは、二番手戦略である。そう、うまくいった人のまねごとをするのだ。IT部門は落ちこぼれている。だから、世の中の上手くいった手法をまねていくのである。ITの世界においては、二番手戦略は決して悪いことではない。Microsoftが最初にPCのOSを作ったのだろうか?Appleが最初にスマートフォンを作ったのであろうか?Googleが最初に検索エンジンを作ったのであろうか?
そう。ITの世界は、真似してナンボの世界なのである。先行者利益を叶えている人は、筆者はあまり知らない。慎重な二番手が一番なんとかなっている。世の中を見てほしい。実はそうなのだ。だから、堂々と真似しようではないか。

また、二番手戦略は日本人に向いている。日本人は、特に明治以降、この真似事で成長したのではないのか?江戸時代、日本はある意味、世界の中の落ちこぼれだった。そこからグローバルスタンダードを学んでのし上がった歴史を持つ。和魂洋才という、UX的に最高、すなわちかっこいい用語まで作った。だから、真似ること自体は日本人の成功体験の一つなのだ。
グローバリゼーションでは、日本企業は救えないという筆者の主張と矛盾するという人がいるかもしれない。そう感じてもしようがない。筆者が伝えたいのは、グローバルスタンダードをそのまま入れてもダメだということだ。環境が違うから。大切なのは、「和魂」の方だ。グローバルスタンダードだって、いいところはあるに決まっている。それを、どう真似るか、何を入れて何を入れないかが重要なのだ。
経営者中心ではなく、従業員中心に動く日本企業ならではの、折衷案を探していくことが日本人には得意なのだ。
もともとのところに、独自性はない。真似ていくことを、自分なりにアレンジしながら使っていくことが日本人は得意なのだ。独自性は、日本のトップ企業に任せよう。多くの、トップではない企業は、どう上手く真似るか、そこに注力をしていこう。
世界でもっとも古い企業は、日本にある。また、200年以上続く企業が世界でもっとも多いのは、日本だとういう。職人技を無条件に愛する日本人は悪いのか?政治家をあたかも商品のように使い捨て(2000年以降の日本の政治の変遷は筆者にはそう見える)、次から次に支持政党を変える日本を、世界は羨ましく思っていないか?アレンジしながら真似ることで出来上がった日本は、そうそう悪いものではないのではないだろうか?

世の中にあるものを学び、上手に使いこなすことを、きちんと成し遂げることのどこが悪いのか?それで、経営が求める、コア機能の強化を、適切なQCDでやること以上に何が必要となるのか?
経営は、そこまでITに多大な期待をしていない。何か、画期的なことをやれといっているのか?ITではなく、人材活用であり、商品やサービスの独自性を求めているのではないのか?そうした中、ITは、そこそこのものを、それなりのQCDでやることが出来ると、それなりに重宝されるのではないのか?中には、「Googleにできて、なぜうちではできないのか?」とまことしやかに聞く、世間知らずの経営層がいるのかもしれないが、そうした人は、せいぜい執行役員どまりで、経営トップにいないのではないか?落ちこぼれから脱するには、まずは「そこそこ」が「それなりの速度と、品質と、コスト」でできればいいのではないか?

繰り返すが、冷静に解析すれば、ITにそこまで多大なことは求められていない。

もう一度、このブログの開始点に立ち返ろう。あなたは、おそらく、落ちこぼれているのである。まず、今の状況からの脱出を考えなければならない。
独自の価値を追求するという発明が求められているわけではない。日本企業の中で、さほど注目されない部署の責任者を任されているのだ。まずは、そこそこから行かなければならない。自分の理想は、ひとまずおいておこう。会社を引っ張るようになるという理想。それは、このブログの最後にまで、とっておくことを、強く推奨する。


プロフィール

宮本 認 Mitomu Miyamoto
BA参画前は、某外資系ファームで統括を務める。17業種のNo1/No2企業を経験した異色のIT戦略コンサルタント。

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