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要件定義力を徹底的に再構築する:⑧要件定義力の再構築はできるのか?

要件定義力の再構築はできるのか?

本項を通じて、信用を取り戻すためにはプロジェクトを失敗してはならないこと、失敗体質から脱却するには要件定義力の再構築が必要であること、要件定義力の再構築にはフェーズを3つにわけること、一つのプロジェクトを小さくすること、事前の準備を進め、人を育てること、要件定義をマネージすることが必要であると述べた。ここには、トリック的な解決策は何もない。
システム部門が強い企業・・・銀行などのIT産業化が進んでいる企業の中でたまに散見される。そうした企業では、例外なく要件定義力の再構築は必ず出来上がっている。システム部門が強いから要件定義力が再構築されているのか、要件定義力が再構築されたからシステム部門が強くなったのか、鶏と卵の関係性を議論したくもなるが、こうした例示企業でも昔からIT部門が強かったわけではない。すなわち、要件定義力の再構築がシステム部門の影響力を押し上げているのだ。
また、まとめてみると、考え方として難しいものは何一つない。フェーズを3つにわけて進めよう、一つ一つのプロジェクトを小さくしよう、要件定義をマネージしようなどちょっと考えるとすぐにできることだ。確かに、人材の準備は人の問題もあるのでそうやすやすとはいかない面もあるが、それ以外は簡単なことだ。

何が再構築の成功と失敗の境目になるのか。まずは、やるかどうかだ。目に見える危機的状況にある…例えば、失敗を重ね規制当局から指導を受けているとか、顧客から大クレームを受けて仕事を失いそうになるとか、そうした場合、すなわち危機にあれば改革は進めやすい。しかし、危機になっている状況はまずい。危機になる前に、臨界点を超える前に取組を本格化することが大切だ。
では、何がそれをさせるのか。月並みだが、リーダーシップだ。リーダーが改革を進めようと心に決めるほど自分達のことを大切に思っているかどうか、「今じゃなくていい」など保身的なことを思わないかどうかにまずはかかっていると思う。要件定義の改革策は、斜め目線から言えば「誤魔化し」をきかないような仕組みを導入することだ。リーダー自身も、その中で働く部員も、誤魔化しがなくなることで窮屈に感じることは増えるし、プレッシャーにさらされる機会が増える。だから、みんな筋論では正しいとわかっていても、自分が大変になるのは目に見えているから、改革を前に進めようとは思わない。そうした後ろ向きな気持ちを突破できるほど、リーダーが組織を大切に思っているかどうかが、まずは問われることとなる。

以降で情報システム部門の改革策を更に述べていきたいと思う。しかしながら、要件定義力の回復こそが情報システム部門の改革の一丁目一番地である。少しでも懸念が残るようであれば、まずはここを一掃しなければならない。情報システム部門としての当たり前の、本分の業務である。ここができなければ、どのような発展方向も実は望めない。ユーザー、経営、顧客、ベンダーときちんとコミュニケーションを作り、最適なプロセスを作る能力である。忘れてはならない。要件定義ができないと、他の何もできないのだ。


プロフィール

宮本 認 Mitomu Miyamoto
BA参画前は、某外資系ファームで統括を務める。17業種のNo1/No2企業を経験した異色のIT戦略コンサルタント。

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